「わはははは、ついにできたぞ、できたというか、改造に成功したのだ」
大声を出して喜ぶ博士に助手の美和も抱きついて喜びを表した。
「博士ええ、これってノーベル賞ものじゃあ、ありませんかあ」
「お、そうかのう」
「そうですよ、世界中の子供が喜びます」
「だが、季節外れじゃとは思われまいか」
「そんなことありません。確かに、色とりどりというわけには行きませんが、ご覧ください」
博士は目の前の5mほどの高さのモミの木に目をやった。
「これでいいんだろうか」
「いいにきまってます。まるで、輝く雪が舞ってるようにも見えますし、何よりも彼らは自由です」
「しかし、ほかのイルミネーションに比べ、見劣りはせんかなあ」
「とんでもありませんよ、博士、私はこちらの方が断然好きです」
「そうか、では、どこに持って行こうか」
「そうですね、やはり、効果的な場所がいいですわね」
「では、何もないところがいいのではないか」
「それでは人が集まりません」
「じゃあ、どこだ」
「やはり、六本木のミッドタウンとか、丸の内ビルとかじゃないでしょうか」
「なんか怖い気もするなあ・・・もし誰にも受けなければ、今までの品種改良に告ぐ改良が水の泡じゃ」
そ、そうですね・・・美和は思わずいいそうになったが、勇気を出した。
「大丈夫です。神様はきっとみていてくれますよ」
博士は腹をくくったようだ。
「じゃあ、一番イルミネーションの多い場所へいってみようか、どうせなら本丸へ体当たりじゃ」
いったい、どこが本丸なのかはわからなかったが、一番明るそうなところとして、2人は東京ミッドタウンを選んだ。
「うわああ、なんてきれいなイルミネーションでしょう」
美和はその飾り付けのすばらしさに目を奪われた。
「やっぱり辞めておこうか」
「いーえ、博士、やりましょう、ここまで来たんですから」
「そうかあ・・・なんだかわしは自信がなくなってきたよ」
そのときである。
電力消費量をLEDに変えることによって少なくしたはずのクリスマスツリーのイルミネーションであったが、その数があまりにも多すぎたのか、ほかに何か事故が起きたのだろう。
東京ミッドタウンのイルミネーションが一斉に消えてしまったのだ。
ざわめくお客たち。
驚く、主催者側に電力関係者。
「まさか、なんてことだ・・・せっかくの」
そのときだった。
数百万個の光の玉が中を舞いだしたのである。
それは光の雪の舞いのようでもあり、輝く妖精たちのクリスマスプレゼントのようにも見えた。
歓声が上がった。
「信じられない」「すごーい」「なんなの、このイルミネーションは、まるで雪が踊ってるみたい」
主催者側も電力関係者も驚いた。
「こ、これは、いったい、な、なんだ」
豆粒ほどの黄色から緑っぽい光の渦があたり一面を舞っていた。
「は、博士・・・まさか、こんなにすばらしいなんて」
「ああ、信じられん」
それはそこに訪れていた誰もが信じられない光景だった。
「ホタル」
「え、ホタル」
「そうだよ、あれは」
「まさか」
「でもホタルだ」
「ホタルのイルミネーションだ」
あたりは「ホタル」という人々の声と歓声で湧き上がっていた。
「メリークリスマス・・・」そうつぶやきながら博士はひざまづき乱舞するホタルを見つめていた。
「メリークリスマス!博士、最高のクリスマスプレゼントですわね」
乱舞するホタルの群れは、全ての人の心を奪った。
そして、電力が回復し、イルミネーションも点灯した。
季節はずれのホタルとイルミネーションのコラボレーションはいつ消えるともなく。
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あるSNSで交流のある「ちいーまん」さんの創作小説です。
イルミネーション問題を取り上げた私のブログにぴったりだったのでお願いして転載許可をいただきました。
そのSNSは
ココット(COCOT)といいます。小さなコミュニティで居心地はいいですよ。
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